みなさん、こんにちは。
大阪・岸和田、南大阪、和歌山を拠点に「住まいに愛着を」をコンセプトに活動している I Live|田辺弘幸建築設計事務所の田辺です。
先日、10年ほど前に設計させていただいたお住まいへ、久しぶりに伺いました。
完成したばかりの頃とは違い、庭の木々も大きく育ち、建物も少しずつ時間をまといながら、その場所に馴染んでいました。
設計した家が、年月を重ねながら暮らしの中に溶け込んでいる様子を見ることは、設計者としてとても嬉しい時間です。
今回のご相談は、敷地内に新しく増築するか、それとも既存の母屋を改修するか、というものでした。
母屋は昭和初期に建てられた古民家です。
古い建物に手を入れることは、簡単なことではありません。
耐震性、断熱性、使い勝手、設備の更新、工事費、今後の維持管理など、考えるべきことはたくさんあります。
今の暮らしに合わせるためには、間取りや動線を見直す必要があるかもしれません。
冬の寒さや夏の暑さに対して、断熱性能をどこまで高めるかも大切です。
また、古い建物の場合、工事を始めてから分かることもあり、費用面でも慎重な検討が必要になります。
一方で、その母屋には長い時間があります。
先祖代々受け継がれてきた建物。
家族の記憶が残る場所。
地域の風景の一部になっている家。
新しく建てることでは得られない価値が、そこにはあります。
だからこそ、今回のご相談は単純に「増築がよいか、改修がよいか」という二択ではないと感じています。
これからの暮らしにとって、何を残し、何を変えるのか。
次の世代へ、どのような形で引き継いでいくのか。
そのために、どこまで手を入れるべきなのか。
そうしたことを一つずつ整理しながら考えていく必要があります。
増築には、今の暮らしに合わせた空間をつくりやすいという良さがあります。
新しくつくることで、断熱性や耐震性、設備面も現在の基準に合わせやすくなります。
ただし、敷地全体の使い方や、既存の母屋との関係をどう考えるかが大切になります。
一方、母屋を改修する場合は、建物が持っている時間や雰囲気を活かすことができます。
梁や柱、瓦屋根、庭との関係など、古い家ならではの魅力を残しながら、今の暮らしに合わせて整えていくことができます。
ただし、耐震補強や断熱改修、設備の更新など、見えない部分にしっかり向き合う必要があります。
見た目だけをきれいにするのではなく、安心して住み続けられる状態にすることが大切です。
どちらが正解かは、すぐに決められるものではありません。
今の暮らしだけでなく、10年後、20年後の暮らし方を考えること。
家族構成の変化、使う人の年齢、維持管理のしやすさ、将来的な使い道、そして費用のかけ方。
それらを比較しながら、長い目で検討していくことになります。
家は、完成した瞬間がゴールではありません。
暮らしが始まり、時間が経ち、家族の状況も変わっていきます。
その変化に合わせて、また相談していただけることは、設計者として本当にありがたいことです。
「設計して終わり」ではなく、その後の暮らしの節目にも関わらせてもらえる。
10年前に設計した家を訪ね、育った庭や、使い込まれた木の表情を見ながら、改めてそう感じました。
家をつくることは、建物を完成させることだけではありません。
その場所で、これからどのような暮らしを重ねていくのかを一緒に考えることでもあります。
先祖代々受け継がれてきた母屋を、どう次の世代へ引き継いでいくか。
増築か、改修か。
その答えを急がず、暮らし方と時間の重なりを見つめながら、丁寧に検討していきたいと思います。
I Live|田辺弘幸建築設計事務所
田辺 弘幸(たなべ ひろゆき)
昭和56年12月12日生まれ
一級建築士
大阪府岸和田市生まれ
設計事例はこちらをご覧ください
大阪・岸和田の設計事務所 I Live | 田辺弘幸建築設計事務所は、『住まいに愛着を』をコンセプトに、住まうごとに味がでる家づくりを目指しています。
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