杉のフローリングは「傷つくのが当たり前」?SNSの炎上から考える、無垢材との付き合い方

query_builder 2026/03/09
ブログ


みなさん、こんにちは。

大阪・岸和田、南大阪、和歌山を拠点に『住まいに愛着を』をコンセプトに活動している I Live|田辺弘幸建築設計事務所の田辺です。


最近、スレッズなどのSNSで、杉の無垢フローリングに業者さんが傷をつけてしまった、という話題を見かけました。

それを見て、「杉の床ってそんなに傷つきやすいの?」「採用すると後悔するのでは?」と不安に思った方もいるかもしれません。


たしかに、杉は無垢材の中でもやわらかく、傷がつきやすい素材です。

ただ、その“やわらかさ”こそが、杉ならではの心地よさや、暮らしへのやさしさにつながっています。


今日は、杉の無垢フローリングの魅力と注意点を、SNSで話題になった「傷つきやすさ」という切り口から整理してみたいと思います。


【杉の床は、たしかに傷つきやすいです】


まず最初に、これは正直にお伝えしておきたいところです。

杉の無垢フローリングは、オークやナラのような硬い樹種と比べると、どうしても表面に傷や凹みがつきやすいです。


家具を引きずったり、工具を落としたり、工事中に何かをぶつけたりすると、跡が残ることがあります。

小さなお子さんのおもちゃや、日々の暮らしの中のちょっとした動作でも、表情が変わっていく素材です。


なので、「いつまでも新築のまま、無傷でピカピカに保ちたい」という考え方には、あまり向いていないかもしれません。


でも、ここで大事なのは、傷つきやすいことを“欠点だけ”として見るかどうかです。


【やわらかいからこそ、肌触りがいい】


杉の床の一番の魅力は、やはり足ざわりのやさしさだと思います。


素足で歩いたときに、どこかやわらかく、さらっとしていて、冷たすぎない。

この感覚は、カタログの性能値だけではなかなか伝わらない、実際に触れて初めてわかる魅力です。


杉は木の中でも密度が小さく、空気を多く含んでいる素材です。

そのため、熱を伝えにくく、冬でもヒヤッとしにくい。

いわば、木そのものが断熱材のような性質を持っているとも言えます。


フローリングに触れたときの“やさしさ”は、見た目だけではなく、こうした素材の性質から生まれています。


【足腰への負担が少ないのも、杉の魅力です】


杉がやわらかいということは、歩いたときの当たりもやわらかいということです。

これは、小さなお子さんがいるご家庭にも、年齢を重ねた方にも、実は大きなメリットになります。


硬い床は、丈夫で傷には強いですが、その分、立ち仕事や長時間の家事で足腰に負担を感じることがあります。

一方で杉の床は、ほんの少し身体を受け止めてくれるような感覚があり、日々の動作の中で疲れにくさにつながることがあります。


床は毎日触れる場所です。

壁や天井以上に、暮らし心地を左右する部分でもあります。

だからこそ、「傷がつきにくいか」だけでなく、「毎日気持ちよく過ごせるか」という視点も大切だと思っています。


【節なしは上品に、節ありはあたたかく】


杉のフローリングは、見た目の表情も幅があります。


節のない杉材は、すっきりとしていて上品です。

やわらかい木目の流れがきれいに見えて、落ち着いた空間によく合います。

和の雰囲気にも、やさしいモダンな空間にもなじみやすい印象です。


一方で、節ありの杉材は、もっと素朴で、あたたかみがあります。

木の個性がそのまま見えるので、自然素材らしさを感じられますし、空間にも親しみやすさが出ます。


どちらが良い悪いではなく、どんな雰囲気の住まいにしたいかで選べるのも、杉の魅力のひとつです。




【コストが手頃なのも、現実的な魅力です】


無垢フローリングに憧れはあるけれど、予算が気になる。

これは家づくりではとても現実的な悩みです。


その点、杉は比較的手頃な価格で取り入れやすい素材です。

もちろん、等級や仕上げ、節の有無などで価格差はありますが、広い面積に無垢材を採用しやすい樹種のひとつだと思います。


「無垢材は高級品」という印象を持たれがちですが、杉なら、予算とのバランスを取りながら、木の心地よさを日常に取り込むことができます。


【傷つきやすさは、魅力の裏返しでもある】


ここが一番お伝えしたいところです。


杉が傷つきやすいのは、素材として繊細だからです。

でもその繊細さは、冷たくなく、やわらかく、足ざわりが良く、身体にやさしいという魅力の裏返しでもあります。


つまり、傷つきやすいことと、心地よいことは、切り離せない関係にあります。


もし「絶対に傷をつけたくない」という価値観が強ければ、もっと硬い樹種の方が合っているかもしれません。

逆に、「多少の変化も含めて、素材と一緒に暮らしていきたい」と思えるなら、杉はとても魅力的な選択肢になります。


無傷のまま維持することを目指す素材というより、日々の痕跡も含めて、住まいの時間が積み重なっていく素材。

杉の床は、そんなふうに捉えると、ぐっと魅力が見えてきます。


【傷がついても、手を入れながら付き合っていける】


杉の床の良さは、傷がつきやすいことだけで終わらないところにもあります。

無垢材なので、傷がついてもメンテナンスしながら付き合っていける素材です。


たとえば、軽い凹みであれば、水分を含ませることで戻ることがあります。

木の繊維がつぶれているだけのような場合は、少し手をかけることで見え方がやわらぐこともあります。


また、表面だけシートを貼った床材ではなく、すべてが杉なので、傷がついても下地と色や質感が大きく変わるわけではありません。

表面だけが剥がれて中身が見えてしまう、という感じになりにくいのも、無垢材の安心感だと思います。


そして、どうしても気になる傷については、削ることで整えることもできます。

もちろん程度や範囲によりますが、補修や手入れをしながら使い続けられるのは、無垢材ならではの魅力です。


新築の状態をずっと保つというより、少しずつ手を入れながら育てていく。

そういう感覚で付き合える方には、杉の床はとても相性の良い素材だと思います。


【施工時には“丁寧に扱う前提”が大切です】


とはいえ、「傷つきやすいから仕方ない」で済ませていいわけではありません。


杉がやわらかい素材であることを知っていれば、施工時も、養生や道具の扱い、搬入の仕方など、より丁寧な配慮が必要になります。

完成後の暮らしの中でつく傷と、工事中の不注意でつく傷は、やはり意味が違います。


だからこそ、杉を採用するなら、設計者・施工者・職人さんがその特性を共有しておくことが大切です。

繊細な素材だからこそ、丁寧に扱う。

それは、杉に限らず、素材への敬意でもあると思います。


【杉の床は、合う人にはとても合う素材です】


杉の無垢フローリングは、万人にとっての正解ではないかもしれません。

でも、素足で暮らす気持ちよさを大切にしたい方、木のぬくもりを感じたい方、足腰にやさしい床を求める方には、とても相性の良い素材です。


節なしで上品に整えることもできる。

節ありで、あたたかく自然な雰囲気をつくることもできる。

しかも、比較的手が届きやすい価格帯で取り入れやすい。


その一方で、傷はつきやすい。

でも、軽い傷なら戻ることもあり、気になる部分には手を入れながら使っていくこともできる。

そうした特性まで理解したうえで選ぶなら、杉の床はきっと、住むほどに愛着の深まる素材になっていくはずです。


【まとめ】


SNSで話題になると、どうしても「傷つきやすい=ダメな素材」という見方になりがちです。

けれど実際には、杉のやわらかさは、肌触りの良さ、冷たさを感じにくいこと、足腰へのやさしさとつながっています。


さらに、無垢材ならではのメンテナンス性があるので、傷がついてもまったく取り返しがつかないわけではありません。

少し手を入れながら、時間とともに育てていけるのも、杉の床の魅力です。


欠点だけを見るのではなく、その性質がどんな心地よさを生んでいるのか。

そして、どんなふうに付き合っていけるのか。

そこまで含めて考えることが、素材選びでは大切です。


杉の無垢フローリングは、完璧に無傷を保つための床ではありません。

でも、日々の暮らしの中で少しずつ表情を変えながら、家族の時間を受け止めてくれる床です。


そうした素材のあり方に魅力を感じる方には、杉はとても良い選択肢になると思います。



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I Live|田辺弘幸建築設計事務所

田辺 弘幸(たなべ ひろゆき)
昭和56年12月12日生まれ
一級建築士
大阪府岸和田市生まれ


設計事例はこちらをご覧ください


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