スキップフロアで、暮らしに立体感を|海南の家に見る心地よいつながり

query_builder 2026/02/25
ブログ

みなさん、こんにちは。
大阪・岸和田、南大阪、和歌山を拠点に『住まいに愛着を』をコンセプトに活動している I Live|田辺弘幸建築設計事務所の田辺です。


家づくりを考えるとき、間取りは「部屋をいくつつくるか」「LDKをどれくらい広くするか」といった、平面的な発想で考えられることが多いです。


もちろんそれも大切ですが、住まいの心地よさは、平面だけで決まるものではありません。

床の高さに少し変化をつけることで、空間のつながり方や、そこで過ごす時間の質は大きく変わります。


その魅力がよく表れているのが、「海南の家」で採り入れたスキップフロアです。


今回はこの住まいを事例に、スキップフロアがもたらす心地よさについて書いてみたいと思います。


スキップフロアが生む「立体的な広がり」


スキップフロアの魅力は、床の高さを少しずつずらすことで、家全体に立体的な広がりをつくれることです。

同じ床の高さで部屋を並べると、それぞれの空間はわかりやすく整理される一方で、どうしても「区切られた部屋」の集まりになりやすくなります。


一方、スキップフロアでは、完全に切り分けるのではなく、少しずつ高さを変えながら空間を連続させていくことができます。

海南の家でも、ひとつの大きな空間の中に高さの差を設けることで、視線が上下にも広がり、実際の床面積以上の豊かさを感じられる住まいになっています。


ワンルームのようにつながっていながら、単調ではなく、場所ごとに異なる表情が生まれる。
そこがスキップフロアならではの面白さです。



つながっているのに、ほどよい距離感がある


家族の気配を感じられることは、住まいの安心感につながります。


ただし、いつも同じ空間にべったりといるのが心地よいかというと、そうとも限りません。

スキップフロアの良さは、空間を閉じずに、ほどよい距離感をつくれることにもあります。
壁で完全に仕切らなくても、高さが少し違うだけで、居場所に自然な性格の違いが生まれます。

たとえば、少し上がった場所は落ち着いて過ごせる場所になり、少し下がった場所は家族が集まりやすい場所になる。


同じひとつながりの空間の中に、「集まる場所」と「少しこもる場所」が共存できるのです。

海南の家でも、上下の段差によって、家族のつながりを感じながら、それぞれが自分の居場所を持てるような構成になっています。
顔は見える。気配も感じる。
でも、少しだけ高さが違うことで、ちょうどいい落ち着きも生まれる。
この絶妙な距離感は、暮らしの中で意外と大きな価値になります。


視線が抜けることで、開放感が生まれる


スキップフロアは、床の高さが変わるだけでなく、視線の抜け方を豊かにしてくれます。

海南の家では、内部の高さの変化に加えて、大きな開口や外の景色との関係も丁寧に整えています。
そのため、家の中にいても視線が止まりにくく、室内から外へ、そして上下階へと、自然に広がっていきます。

この「視線が抜ける」ということは、住まいの開放感に直結します。
実際の面積が同じでも、見える範囲が広いだけで、空間はずっとのびやかに感じられます。

特に、海南の家のように周囲の自然や景色を取り込める敷地では、スキップフロアとの相性がとても良いです。
家の中のどこにいても、少し違った角度で光や緑、空の気配を感じられる。
それによって、日々の暮らしの中に、小さな変化や発見が生まれていきます。



居場所が増えることで、暮らしに幅が出る


スキップフロアのある家は、単に見た目が面白いだけではありません。
暮らし方そのものに幅を持たせてくれるのも、大きな魅力です。


床の高さが変わることで、それぞれの場所に自然な役割が生まれます。
食事をする場所、くつろぐ場所、少し集中する場所、子どもが遊ぶ場所。


部屋名で区切らなくても、空間の使い方にグラデーションが生まれます。

これは、暮らしが変化していく中でも柔軟に使いやすい、ということでもあります。
子どもの成長や家族の過ごし方の変化に合わせて、同じ場所でも使い方を変えていける。
きっちり決めすぎないからこそ、住みながら馴染んでいく余白が生まれます。


海南の家でも、スキップフロアによって、ひとつながりの空間の中にさまざまな居場所がつくられています。
それは、面積を増やすのとはまた違う意味で、住まいを豊かにしてくれる工夫だと思います。


段差をつくることが目的ではない


ただし、スキップフロアは「段差があれば良い」というものではありません。
見た目の特徴として取り入れるだけでは、かえって使いにくい家になってしまうこともあります。

大切なのは、その高さの違いにきちんと意味があることです。


どこでつながり、どこで少し距離を取り、どこに光を導き、どこから景色を見せるのか。


そうした空間全体の関係を考えたうえで、段差を計画することが重要です。

また、将来の暮らし方や年齢によっては、段差の扱いに注意が必要な場合もあります。
だからこそ、スキップフロアは「おしゃれだから採用する」のではなく、その家族の暮らしに合っているかどうかを見ながら考える必要があります。


海南の家でも、スキップフロアは形のためではなく、空間のつながりと景色の取り込み方、そして居場所のつくり方を考えた結果として生まれたものです。
そのため、無理のない自然なかたちで、住まい全体の魅力につながっています。


おわりに


スキップフロアの魅力は、家の中に「立体感」をつくれることです。
それによって、空間はただ広いだけではなく、つながりがあり、変化があり、居場所のあるものになっていきます。


海南の家でも、床の高さを少しずつずらすことで、視線が抜け、家族の気配がほどよくつながり、それぞれが心地よく過ごせる住まいになりました。


家づくりは、部屋を並べることではなく、どう暮らしたいかを形にしていくことだと思います。
スキップフロアは、そのためのひとつの有効な手法です。


もしこれから住まいを考える中で、「広さ」だけではなく、「つながり方」や「居場所のつくり方」にも目を向けてみたい方は、こうした立体的な空間のあり方も、ぜひ選択肢のひとつとして考えてみてください。


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I Live|田辺弘幸建築設計事務所

田辺 弘幸(たなべ ひろゆき)
昭和56年12月12日生まれ
一級建築士
大阪府岸和田市生まれ


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