なぜ無垢なのか|質感と経年変化で、住まいは育つ

query_builder 2026/02/13
ブログ

みなさん、こんにちは。
大阪・岸和田、南大阪、和歌山を拠点に『住まいに愛着を』をコンセプトに活動している I Live|田辺弘幸建築設計事務所の田辺です。


今回は、無垢材について。
タイトルは「なぜ無垢なのか|質感と経年変化で、住まいは育つ」です。


家づくりの打合せでは、「床は傷つきにくい方がいいですか?」「お手入れが楽な方がいいですか?」という話になりがちです。もちろん、それも大切な視点です。


ただ僕は、もう一段奥にある「その家が、年月と一緒にどう馴染んでいくか」をよく考えます。

無垢材を選ぶのは、自然素材だから…という理由だけではありません。


質感が良く、時間が経つほど色艶や手触りが変わり、暮らしの中で表情が増えていく。シートでは出しにくい、本物の深さがあります。


住み始めた瞬間がピークではなく、住みながら少しずつ良くなっていく。そこに無垢材の魅力があると思っています。

この記事では、実例を交えながら「なぜ無垢を選んだのか」を整理してみます。


【無垢材を選ぶときの判断軸】


無垢材は万能ではないので、採用するときは次のポイントをセットで見ています。


・素足で気持ちいいか(冷たさ、硬さ、肌ざわり)
・経年変化がこの家に似合うか(色の変化、艶の出方、日焼けの仕方)
・暮らしの傷を受け止められるか(傷=味わいとして成立するか)
・空間の“馴染み方”(白い壁や光の中で、素材が浮かないか)
・その家の使われ方に合っているか(子育て/人が集まる/来客動線など)


ここから、3つの事例です。今回はご指定の通り、杉 → 杉圧密 → カバザクラの順番で紹介します。


事例1:向かいの家|杉(無垢フローリング)


この家で杉を選んだのは、空間をやわらかく整える力が杉にあるからです。

杉は、木目や節の表情が素直で、白い壁と相性が良い。
光を受けたときにテカテカせず、室内の明るさを邪魔しにくい。結果として、梁や建具など他の要素が引き立ち、空間全体が“馴染む”方向にまとまります。


もうひとつ大きいのが、足触りと温度感。
杉は冷たさを感じにくく、素足の暮らしと相性がいい。暮らし始めてから、この違いははっきりします。

もちろん杉は柔らかいので傷は付きます。


でもこの家では、傷を“劣化”ではなく暮らしの履歴として受け止められる空間づくりをしている。だから杉の性格が活きます。




事例2:みさきの家|杉圧密フローリング(30mm)


「杉の心地よさは好き。でも柔らかさが不安」
これはよく出る悩みです。


みさきの家では、その両方を取りにいくために、杉圧密フローリングを選びました。


杉の軽さ・温度感の良さはそのままに、圧密によって表面の硬さを上げて、日常の傷を抑えやすくする。杉の“弱点”を、素材の選び方で補う発想です。


そして厚みを30mmにした一番の理由は、床の“暖かさ”を確保したかったからです。
冬の朝、素足で立ったときの冷たさは、床材の種類だけでなく、床のつくり(厚みや下地の構成)でも体感が変わります。


30mmの厚みは、足裏に伝わる冷えを和らげ、居場所として床が頼もしくなる。リビングで過ごす時間が長い家だからこそ、この差は小さくありません。

見た目の馴染み方と、素足の心地よさ。その両方を狙って、杉圧密の30mmを選びました。



事例3:仲間が集う寄合の家|カバザクラ(無垢)


人が集まる家では、床も家具も、日々の使われ方が少し“強め”になります。
椅子の出し入れ、子どもが走る、食事の時間が長い、荷物も増える。そんな暮らしの中で、素材には耐久性と品の両立が求められます。


そこで選んだのがカバザクラ。


杉より硬く、傷が入りにくい。けれど、硬すぎて冷たい印象になりにくく、木の温かさも残る。集いの場として、ちょうど良いバランスでした。


また、カバザクラは木目がきれいで、照明や日中の光で表情が変わります。


「みんなが集まる場所」に必要な、少しの華やかさや高揚感を、素材側がつくってくれる。
使い込んで艶が出てくるほど、空間の説得力が増すのも、この家の狙いに合っていました。




【無垢材をおすすめしない(または工夫が必要な)ケース】


無垢材は万能ではありません。ここを無理すると、愛着どころかストレスになります。


・キャスターや重い家具を頻繁に動かす暮らし
・床暖房を前提にする場合(樹種・製品選定がかなり重要)
・手入れの優先順位が低い(汚れが気になる方は塗装仕様や別素材も検討)


無垢を使うなら、「どこに使うか」「どんな塗装にするか」「どう使うか」まで一緒に設計して、暮らしのストレスを先に潰しておくのがコツです。


【まとめ:質感と経年変化で、住まいは育つ】


無垢材を選ぶ理由は、見た目の“自然っぽさ”のためではありません。
その家の暮らし方に合わせて、質感、温度感、耐久性、そして経年変化まで含めて、住み心地の質を底上げできるから選びます。


杉、杉圧密、カバザクラ。


同じ無垢でも性格が違う。だからこそ、建築ごとに答えが変わります。

住み始めて終わりではなく、住みながら少しずつ良くなっていく。
そんな「育つ住まい」をつくるために、無垢材はとても相性の良い選択肢だと思っています。


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I Live|田辺弘幸建築設計事務所

田辺 弘幸(たなべ ひろゆき)
昭和56年12月12日生まれ
一級建築士
大阪府岸和田市生まれ


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