触発する木造──住宅特集2025年3月号セルフ月評

query_builder 2025/02/23
ブログ

みなさん、こんばんは。大阪、岸和田、南大阪、和歌山を拠点に『住まいに愛着を』をコンセプトに、住まうごとに味がでる家づくりを目指している I Livel田辺弘幸建築設計事務所の田辺です。



久しぶりに『住宅特集』を購入しました。最近は「新建築データで見ればいいか」と思い、紙の雑誌を買うことが減っていましたが、データだとなかなか見ないことが多い。やはり、じっくり読み込むには紙面の方が向いていますね。


今回の特集は「触発する木造」。木造建築の可能性を探るプロジェクトが数多く掲載されていました。デジタルでサッと流し見るのではなく、紙面でじっくり眺めながら読むことで、改めて気づくことも多かったので、せっかくなのでセルフ月評を書いてみようと思います。


中川エリカ『木造のニワ』──地面との関係が生み出す新たな空間


最初に目についたのは、中川エリカ氏の『木造のニワ』。 主要な生活スペースを2階に持ち上げ、1階の大半は天井高のあるピロティのような空間になっている。高基礎や連続する斜め材によって周囲から適度に守られながら、昔の民家の土間のような空間が生み出されている点が興味深い。


特に印象的だったのは、「地面との関係性」。ニワを通りイエにアプローチする際、半階上がった1階のスラブ下には杭を突出させた床下空間があり、地面が露出している。このような構成によって、「屋内」と「屋外」、「地面」と「建築」の関係が曖昧になり、新たな居住感覚が生まれているように感じた。


また、1階の開放的なニワと、2階の抑えた天井高の生活空間の対比も面白い。天井高の違いが、空間のリズムや居心地の変化を生み出している。開放と包まれ感のバランスが取れた設計だと感じた。

井端菜美+河合啓吾『連環の家』──集落の時間をつなぐ増改築


この住宅は、母屋とはなれを取り壊して建て替えるという依頼に対し、既存の建物を残しながら増築することで、集落の時間をつなぐ住まいへと発展させている。


築年数が古く老朽化した母屋は床や外壁を撤去し、半屋外のあずまやとして利用。一方、はなれは個室として活用し、新築部分に居間・寝室・水回りを配置。結果として、新築・既存・半屋外が混在する構成になっている。


特に印象的だったのは、足場を利用した屋外デッキ。母屋の補強を兼ねながら、建物同士をつなぐ屋外空間として機能している。これは、空き家が増えている現代の状況において、新たなリノベーションの方向性を示していると感じた。


ドットアーキテクツ『K邸』──簡素な仕上げが生む上品な空間


ドットアーキテクツの『K邸』は、構造現しやラワン合板など簡素な仕上げながら、静謐な空気感を生み出している点が特徴的。 塗装仕上げの白い壁、架構の一部に施された白い塗装、そしてアイアンの手摺や螺旋階段など、シンプルながらも上品なデザインになっている。こうした「素材の選択と線の整理」は、安藤忠雄氏の住宅にも通じるものがあると感じた。


また、「ダーティーキューブ」という概念のもと、施主による生活が上書きされる前提で設計されている点も興味深い。これは、住まいを固定された完成形とせず、時間とともに変化する余白を残す手法として、今後の設計にも活かせそうです。


河合啓吾『SLBH12』──シンプルな構成で生まれる現代の民家


3m角の9グリッド平面に、高さ3mの柱を建て、CLTの切妻屋根を架けたシンプルな構成。 欄間状のトラス架構と小屋裏が特徴的で、ローコストで大きな空間を生み出している。


簡素ながら、建築家自身が設計施工まで手掛けることで、余白のある空間として成立している点が興味深い。これは、設計と施工の一体化によって可能になる現代の民家と言えるかもしれない。

神谷勇机+後藤唯/1-1 Architects『House & Office SH』──異質な斜め材が生む空間の緊張感


名古屋で50年続く工務店の新事務所兼住宅。 シンプルな木の架構が連続する立体的な空間の中に、唐突に挿入されたストック木材の斜め材が目を引いた。これは単なる装飾ではなく、短辺方向を支える構造的な役割を担いながら、異質な要素として空間に強烈な印象を与えている。 特殊な手法ではあるが、ありものの素材を使いながら空間の質を変える設計のヒントになりそうだ。


榊原節子+木野智加子/榊原節子建築研究所『光廊の家』──都市の狭小地で実現する木造3階建


準防火地域に建つ木造3階建てでありながら、構造材現しを実現している点が興味深い。 隣地に面する開口部の面積を制限し、「準延焼防火建築物」とすることで、準耐火建築物と同等の防火性能を確保。その条件のもと、13の天窓を連続させた「光廊」を設け、光の取り入れ方を工夫している。 光を強調するニュートラルな白い空間と、木の架構が現しの住空間の対比が美しく、大阪の狭小地における都市住宅のひとつの解答になり得ると感じた。


まとめ


今回の特集「触発する木造」では、木造の持つ柔軟性と時間の蓄積を生かす設計手法が多く見られました。 それぞれのプロジェクトが示す新たな木造の可能性を、今後の設計にも活かしていきたいと思います。

----------------------------------------------------------------------
----------------------------------------------------------------------

I Live|田辺弘幸建築設計事務所

田辺 弘幸(たなべ ひろゆき)
昭和56年12月12日生まれ
一級建築士
大阪府岸和田市生まれ


設計事例はこちらをご覧ください


大阪・岸和田の設計事務所 I Live | 田辺弘幸建築設計事務所は、『住まいに愛着を』をコンセプトに、住まうごとに味がでる家づくりを目指しています。
お問合せはメール、電話等でお気軽にご連絡お願いします。
------------------------------------------------------------------------------
I Live | 田辺弘幸建築設計事務所

電話番号 072-447-5330
営業時間 9:00~17:00
定休日  土・日・祝(打合せは可能です)
大阪府岸和田市磯上町6-12-11
ilive.arch@gmail.com
インスタグラムはこちら←Follow me!
------------------------------------------------------------------------------


----------------------------------------------------------------------

NEW

VIEW MORE

CATEGORY

ARCHIVE

TAG