みなさん、こんにちは。
大阪・岸和田、南大阪、和歌山を拠点に『住まいに愛着を』をコンセプトに活動している I Live|田辺弘幸建築設計事務所の田辺です。
今日は「庭間の家」を事例に、小さな居場所について書いてみます。
家づくりの打合せで、「書斎がほしい」という言葉を聞くことがあります。
在宅ワークのため、読書のため、趣味の時間のため。理由はさまざまですが、どこかに“ひとりになれる場所”を求めている、という気持ちは共通しているように思います。
ただ、その場所は必ずしも立派な個室である必要はありません。
むしろ、少しこもれて、少し切り替わって、少し特別な気分になれる場所。そんな空間のほうが、日々の暮らしの中では豊かに使われることもあります。
「庭間の家」では、通り土間の上部に、2.5階のような位置づけの小さな場所を設けました。
小屋裏のようでもあり、書斎のようでもある。けれど、ただ“仕事をする部屋”というよりは、自分だけの居場所に近い空間です。
【少し上がった先にある、自分だけの場所】
この場所の魅力は、まず“たどり着き方”にあります。
土間から階段を上がり、さらに少しだけ上がった先に現れるこの空間は、1階とも2階とも少し違う感覚があります。
完全に閉じた個室ではないけれど、家の中の動線から少しだけ離れていて、自然と気持ちが切り替わる。こうした“少し上がる”という行為が、その場所を特別なものにしてくれます。
ただ机と椅子を置くだけでは生まれない、居場所としての濃さ。
それは、空間の大きさではなく、家の中での位置や、高さの関係、そこへ向かう身体感覚によって生まれているのだと思います。
【仕事のためだけではない余白】
書斎というと、どうしても「仕事をする部屋」という印象が強くなります。
もちろん仕事をする場所としても使えますが、この空間の良さは、それだけに限定されないところにあります。
机に向かって少し集中する。
本を読む。
音楽を聴く。
考えごとをする。
ぼんやり過ごす。
そういう、用途として明確に名前をつけにくい時間を受け止めてくれるのが、この場所の魅力です。
暮らしの中には、「これをするための部屋」だけでは収まりきらない時間があります。
何かに没頭したいときもあれば、少し気分を整理したいときもある。
そんな時に、家の中にこうした余白のある場所がひとつあるだけで、暮らしの質はぐっと上がるように感じます。
【こもれるけれど、閉じすぎない】
この書斎スペースは、こもり感がありながら、閉じすぎていないのも特徴です。
小屋裏のようなスケール感で包まれながらも、階段や周囲の空間を通して家の気配ともつながっている。
完全に遮断されるわけではないので、孤立しすぎず、でも適度な距離感は保てる。
この“ちょうどよさ”が、とても大事だと思っています。
家の中でひとりになりたい時間はあっても、家族と切り離されたいわけではない。
そんな感覚に、このくらいの距離感がよく合います。
閉じる・開くをはっきり分けるのではなく、その間にある曖昧さを丁寧につくること。
それが、住宅の居場所づくりでは意外と重要です。
【窓辺のカウンターが、もうひとつの居場所になる】
この家では、書斎のそばにある2階ホールにも、窓辺のカウンターを設けています。
このカウンターは、こもって使う“隠れ家”のような書斎とは少し違い、もう少し開かれた場所です。
家の気配を感じながら、勉強をしたり、本を読んだり、ちょっとした作業をしたり。
ひとりで落ち着けるけれど、閉じすぎない。その距離感がこの場所の心地よさにつながっています。
大きな窓に向かったカウンターは、視線が外へと抜け、手元に向かいながらも気持ちは少し外へ開いていきます。
集中したいけれど、部屋にこもりきるほどではない。
そんな時にちょうどいい居場所です。
そしてこの窓辺のカウンターがあることで、書斎もまた、ひとつの独立した部屋として閉じるのではなく、2階ホールとゆるやかにつながる場所になっています。
隠れ家のようなこもり感と、窓辺の開放感。
その両方が近くにあることで、その時々の気分に合わせて居場所を選べるようにしています。
家の中には、完全に分けられた部屋だけでなく、こうした少し曖昧で連続した居場所があることで、暮らし方に広がりが生まれます。
窓辺のカウンターは、書斎を支える“もうひとつの特等席”として、この空間に豊かさを与えてくれています。
【隠れ家のような場所が、暮らしを豊かにする】
家づくりでは、LDKや寝室、水まわりのような主要な空間に意識が向きやすいですが、実はこうした小さな居場所が、暮らしの満足度を大きく左右することがあります。
広さや設備の充実だけではなく、
どこで気持ちを切り替えられるか。
どこで自分の時間を過ごせるか。
どこにいると落ち着くか。
そんな視点で家を考えていくと、間取りの見え方も少し変わってきます。
「庭間の家」のこの場所は、いわゆる書斎という言葉でも説明できますが、どちらかといえば“隠れ家”という表現のほうがしっくりきます。
仕事と趣味がゆるやかに溶け合い、考えごとも、手を動かす時間も、ぼんやりする時間も受け止めてくれる場所。
それは、毎日の中にそっとある、自分だけの特等席なのだと思います。
【まとめ】
書斎は、必ずしも独立した個室でなくてもいい。
むしろ、家の中に少しだけこもれる場所、少しだけ切り替えられる場所があることで、暮らしはもっと豊かになります。
「庭間の家」の2.5階にあるこの小さな空間は、まさにそんな居場所のひとつです。
用途を決めすぎず、でもちゃんと使いたくなる。
仕事にも趣味にも、そして何もしない時間にも寄り添ってくれる。
さらに、そのそばにある2階ホールの窓辺のカウンターが、もうひとつの居場所としてこの空間の幅を広げています。
こもる場所と、少し開く場所。
その両方がゆるやかにつながることで、暮らしの中にちょうどいい居場所のグラデーションが生まれます。
家の中に、自分だけの“隠れ家”をどうつくるか。
それもまた、住まいに愛着を育てる大切な設計のひとつだと感じています。
I Live|田辺弘幸建築設計事務所
田辺 弘幸(たなべ ひろゆき)
昭和56年12月12日生まれ
一級建築士
大阪府岸和田市生まれ
設計事例はこちらをご覧ください
大阪・岸和田の設計事務所 I Live | 田辺弘幸建築設計事務所は、『住まいに愛着を』をコンセプトに、住まうごとに味がでる家づくりを目指しています。
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