みなさん、こんにちは。
大阪・岸和田、南大阪、和歌山を拠点に『住まいに愛着を』をコンセプトに活動している I Live|田辺弘幸建築設計事務所の田辺です。
今日は「庭とつながる家」を事例に、素材選びの話を書いてみます。
家は放っておくと、「新築の時がいちばん良かった」で終わってしまいがちです。
建てた直後がいちばん綺麗で、あとは劣化していくだけ…という見え方になりやすい。
でも、素材の選び方と付き合い方を整えると、家は逆に「住むほどに良くなる」方向にも持っていけます。
それは資産価値の話だけではなく、日々の満足度や、手触りとしての豊かさの話です。
今回の家は、庭と暮らしが近いぶん、素材が日々の体験に直結します。
だからこそ、素材選びの考え方がそのまま暮らしの質になります。
【庭とつながる家が、素材の良さを引き出す】
この家の魅力は、室内から庭への距離が近いことです。
大きな開口が庭に向いていて、床の延長としてウッドデッキがあり、外に出ることが特別になりません。
天気の良い日に窓を開ける。
庭で遊ぶ子どもの気配が、家の中に自然に入ってくる。
室内にいても、季節の変化がちゃんと伝わる。
こういう住まいでは、素材の“変化”がそのまま味わいになります。
日射、風、雨、土。庭と近いほど、素材は環境の影響を受ける。
それを劣化として避けるのではなく、変化として受け止められる素材を選ぶと、家は年数とともに良くなっていきます。
【外壁:杉板張りとガルバリウム鋼板の組み合わせ】
この家は、前庭に面した外壁を杉板張りに。
それ以外の面はガルバリウム鋼板を採用しています。
この組み合わせは、使い分けの考え方がとても明快です。
・庭に向く面は、近くで見る面
・それ以外の面は、離れて見る面/雨風にさらされやすい面
庭に向く面は、毎日目に入り、出入りのたびに自然と触れる場所です。
だからこそ、木の表情があるだけで、暮らしの背景が一気に柔らかくなります。
木は光の当たり方で表情が変わり、庭の緑とも相性がいい。
一方で、建物全体を杉板にすると、メンテナンスの負担が増えることもあります。
そこで、雨風の当たりが強い面や汚れが付きやすい面はガルバリウムにする。
耐久性や維持管理の現実を踏まえた上で、木の良さを“効かせる場所に効かせる”設計です。
木と金属を混ぜるとチグハグになりそう、と思われることもあります。
でもポイントは「どこで切り替えるか」。
庭側=暮らしの顔、その他=守りの面。
役割がはっきりすると、素材の切り替えはむしろ気持ちよく見えます。
【床:杉板張りは、住むほどに馴染む】
内部の床は杉板張りです。
杉は柔らかいので、「傷が心配」と言われることもあります。
ただ、傷ひとつないピカピカの空間は、少し緊張してしまうこともあります。
無垢の床は傷が入りますが、その傷も暮らしの中で少しずつ馴染み、空間の表情になっていきます。
それは“雑”という意味ではなく、生活の揺らぎを受け止める懐があるということ。
庭から戻ってきて、少し土がついた足で上がる。
子どもがおもちゃを落とす。
椅子を引く。
季節で湿度が変わる。
こういう日常の中で、杉の床は少しずつ表情を増していきます。
新品のツルっとした綺麗さより、少しだけ馴染んだ床の方が、居心地が良いと感じる方も多いです。
そして杉は、素足の感触がやさしい。
冬の冷たさがマイルドで、夏はさらっとする。
庭と行き来する暮らしの中で、身体感覚としての心地よさが積み重なっていきます。
【壁:しっくいをDIYで。暮らしの手触りが残る】
この家の壁は、しっくいをDIYで仕上げています。
DIYには「安く済ませる」以外の価値があります。
自分たちで手を入れた場所は、住まいが急に自分ごとになります。
・多少ムラがあっても、それが愛着になる
・小さな欠けや汚れが出ても、直せるという安心がある
・家が「完成品」ではなく「育てるもの」になる
しっくいは光を柔らかく受け止めてくれます。
庭から入る反射光も、室内でギラつかず、ふわっと広がる。
木の床や梁とも相性がよく、全体の空気が落ち着きます。
DIYで仕上げた壁は、最初から完璧じゃないぶん、暮らしの変化に強い。
「少し直しながら住む」が自然にできるのが、住むほどに良くなる住まいの土台だと思います。
【天井:化粧梁現しが、時間を見せてくれる】
天井は化粧梁現しです。
梁のリズムが空間を整え、視線が自然に動くことで、居場所が生まれます。
それだけでなく、梁の良さは「時間が見える」こと。
木は年数で色が変わり、陽の当たり方で濃淡も出る。
その変化が空間の味になっていきます。
新築直後の白さ・明るさも良いですが、数年後、木が少し落ち着いた色になった頃に、空間がぐっと締まって見える。
そういう変化を前提にできるのが、現しの良さです。
【新築のピークで終わらせないための素材選び 3つの考え方】
最後に、今回の家の考え方を、他の家づくりにも転用できる形にまとめます。
1)変化する素材を、変化していい場所に使う
庭側の杉板張りはその典型です。
近くで見る場所、触れる場所、日常の背景になる場所ほど、変化が味になる素材が向いています。
2)守るべき場所は、現実的に強い素材で抑える
ガルバリウム鋼板のように、手がかからず雨風に強い素材は、外周の守りで効きます。
全部を自然素材にしないといけない、という話ではありません。
3)直せる素材・直せる関係をつくる
DIYしっくいは、直しやすさが暮らしの安心になります。
「汚したら終わり」ではなく、「手を入れながら育てる」へ。
【おわりに:価値が増す家は、暮らしのリズムが整う】
住むほどに価値が増す家というのは、特別な高級素材を集めた家ではなく、
日常の中で素材がちゃんと働く家だと思っています。
庭とつながる家は、季節と暮らしが近い。
だから素材の選び方が、暮らしの心地よさに直結します。
新築の“きれいさ”を守り続けるのではなく、
変化を受け止めながら、少しずつ馴染んでいく家へ。
そんな視点で素材を選ぶと、数年後に「この家、前より好きになってるな」と感じる瞬間が増えていきます。
I Live|田辺弘幸建築設計事務所
田辺 弘幸(たなべ ひろゆき)
昭和56年12月12日生まれ
一級建築士
大阪府岸和田市生まれ
設計事例はこちらをご覧ください
大阪・岸和田の設計事務所 I Live | 田辺弘幸建築設計事務所は、『住まいに愛着を』をコンセプトに、住まうごとに味がでる家づくりを目指しています。
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