みなさん、こんばんは。
大阪、岸和田、南大阪、和歌山を拠点に「住まいに愛着を」をコンセプトに活動している I Live｜田辺弘幸建築設計事務所の田辺です。

少し前になりますが、香川県の大串半島にある《時の納屋》を訪れました。建築家・堀部安嗣さんが設計された、大串自然公園内の休憩所兼飲食施設です。讃岐の風土に溶け込むように静かに佇むその建築は、訪れた人に穏やかな時間をもたらしてくれます。

大屋根のシルエットは、どこか牧歌的でありながら、凛とした緊張感もあわせ持っています。構造には地元の杉材がふんだんに使われ、柱・梁・天井・建具まで、木のもつやさしい表情と力強さを存分に感じることができます。室内に入ると、幾重にも重なる架構が頭上を包み、自然光が木肌に柔らかく反射する空間は、まるで森の中にいるような感覚でした。

開口部からは、瀬戸内海の穏やかな風景が広がり、まるで一枚の絵画のよう。庭や石積みとのつながり方も絶妙で、屋内と屋外がゆるやかに連続しています。

杉板張りの外壁は、これから風雨にさらされ、時間とともに美しい銀鼠色に変化していくことでしょう。まさに「時の納屋」という名のとおり、時の流れと共に味わいを深めていく建築です。

訪れて感じたのは、堀部さんの建築がいつもそうであるように、「地域」と「素材」と「時間」を丁寧につなごうとしていること。まるでシーランチコンドミニアムのように、自然に溶け込む佇まいが印象的でした。厳しい自然に身を寄せるような構えと、木の素朴さが共鳴しているように思えたのかもしれません。

瀬戸内の静かな風景の中で、建築がまとう空気に心を預けるようなひとときでした。

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