伊東豊雄さんの「２１世紀の建築をめざして」を読みました。
自然と建築が一つになること「建築＝自然」というのが伊東さんの建築の夢だといいます。

２０世紀はコルビジェが「建築を目指して」で提唱した近代建築の五原則や、ミースのユニバーサルスペースなどの概念で建築が作られてきました。それらは、建築が自然を制御するといった西洋的な思想に基づいていたのですが、２１世紀に入り様々な形で限界が露呈しています。

伊東さんは東日本大震災で自然が建築を圧倒する様を見て、西洋的な建築の概念の限界を感じ、アジアから発信する建築、アジア的な建築は可能かという命題を掲げています。東洋では、人が自然や動物を見下すのではなく、人は自然の一部分と考えられています。建築は自然の中で孤立するのではなく、自然との境界をあいまいにし、自然と混ざり合うような建築のあり方を試みられています。その概念自体は伝統的な日本の建築とそうかわらないのですが、特殊な幾何学を用いて新しい建築へと昇華されています。一方でみんなの家などすごく素朴な試みもされていて、これからの伊東建築はどこに向かっていくのか楽しみです。

大きなタイトルですが、「風の変様体」や「透層する建築」などに比べて平易な文章で書かれていて読みやすい本でした。